Bar Mulberry
2020.12.8 837 View No Comments »
先月、熊本のBARの灯がひとつ消えました
下通にあったお店の名前は『バー マルベリー』
僕がバーテンダーという生き方を
初めて教えてもらったお店
もともとは『桑の実』という
女性のマスターさんが着物でカウンターに立っていた
クラブの様なバーだったそうですが
マスターがお店を引き継いで
名前を少しだけ変えて、再スタート
桑の実さんで10年、マルベリーさんで30数年
やがては50年に届くのではないかというほどの老舗のバー
あまり、細かく説明の様に書くのは好きでは無いので
端折りながら書きますけど
僕もこのお店で働いていました
今から11年前、26歳の時
当時、バーとは名ばかりの
スナックの様なお店で働いていた僕は
「本当のバーってどんなお店なんだろう?」と
知り合いの伝手などを使い
いくつかのバーに顔を出していた
バーにはそれぞれスタイルがあって
作り出される雰囲気は千差万別
バックバーに並ぶキラキラしたボトルたちに
髪の毛をピシッとまとめたバーテンダーさん
背筋が伸びて、所作も美しい
作り出されるカクテルは
とても輝いて見え、ワクワクし
僕も背筋を伸ばして、格好つけて飲んだ
バーテンダーさん達の
カウンターを挟んで
たくさんの人を相手にして
常に見られながらの仕事姿に
興味を持っていた
・・・・・。
「バーテンダーが居るバーで働かないと、意味が無い」
そう思った僕は
そのなんちゃってバーを止め
マルベリーで働くことにした
あれは面接の日
扉の前で立ち止まり
凄そうなお店に来てしまったとビビる
扉を引くと、重い
これが外と中を分ける扉なんだなと
改めて扉の意味を確認しながら店内へ
「こんばんわ、面接に来ました光田です」
「おぅ!」
僕が今まで見てきたバーテンダーさんとは違う
小柄で、ずんぐりした
色黒で、眼がギョロリとしたマスターが手招きした
「圧が凄い」
カウンターの後ろのテーブル席だったと思う
僕が何者で、趣味は何か
家族構成、彼女の有無
そんなところを聞かれたと思う
次の日から働き始めるわけだが
働きながら、僕はひとつの課題を出された
「一日五人と会って来て、その内容を面白おかしく俺に話せ」
この課題の意味に気付くのは
お店を止めた後になるのだが
当時の僕は意味も分からず
五人に会えず怒られ
面白おかしくないから怒られ
達成できない日々を過ごしては、怒られ
怒られ怒られ怒られ
間違いなく人生で一番怒られた
久しぶりに会った知人には
手を振って近づいたにも関わらず
目の前に来るまで気付かれず
「ごめん全く気付かんかった、違う人だと思ったよ。オーラが暗すぎて」
、、、笑
そして、入店して4カ月
辞めた
辞めさせてくださいという僕に
マスターはたった一言
「立派なホームレスになれ」
それが本心だったのか、冗談だったのかは
最後まで分からなかったが
(分からなくても良いのだが)
マスターは給料明細の裏側に必ず
その月の課題と、激高の言葉を書いてくれていた
応えきれなかったのは僕なんだと思っている
たった4カ月間だったが
今でも覚えている言葉はいくつかある
僕に向けて言われた言葉なので
ここに書くことは止めるが
それを思い返すと
先ほどの課題の答えも出てくる
意味があることなのだ
辞めてから一年後の年末だっただろうか
先輩のお店の扉を開けると
マスターが座っていた
先輩の計らいで、そこからまた
マスターとの付き合いも再開するのだが
とりあえず、「ホームレスにはなってません」
黙って心の中で伝えた
それから10年近くになるのかと思うと早い
マスターはまだまだ現役で
カウンターの向こう側で
ガハガハと笑っているものだと思っていたが
農家になると言って、スパッと辞めて行かれた
寂しくもあったが
それは潔く
最後の日もたくさんのお客さんと笑っていた
格好良かった
お陰でまた少し考えさせられた
来年の、これからの生き方
少し見えてきました
お疲れさまでした、またお会いしましょう
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次回の読書会は
12月27日(日)15時から行います
ご興味ある方は、お好きな本をお持ちになってご来店下さい
ご予約などは必要ありません
お気軽にどうぞ
この日は通常営業していますので
終わった後にお食事も楽しめますので、ぜひどうぞ
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Tomorrow never knows ♪